改築工事のポイント|そもそも改築ってどんな工事?
マンションや戸建てなど、住宅をより生活しやすいように作り変える改築工事。
出産、子どもの独立、親との同居など、ライフステージの変化によって、最適な住環境は変わります。
そのなかで、今の住宅にちょっとした不便さを感じ、「改築したい」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、最近は「改築」という言葉のみが独り歩きしてしまい、
正しい意味を理解されずに改築工事を検討する方が増えてきている傾向にあります。
実は改築工事は建築基準法でもその定義がしっかりと決められていて、
できることとできないことが明確に分けられていたりするものです。
そのため、これから住宅の改築工事をしたいと考えているのであれば、改築工事について正しく理解していくことが大切です。
そこでこの記事では、住宅の改築工事について詳しく紹介していきたいと思います。
改築工事がどういった内容の工事なのかについてはもちろん、改築工事の種類やそれぞれの工事にかかる費用の相場、
固定資産税と改築工事の際にもらえる可能性のある補助金などについて紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
【目次】
– 改築工事前に知っておきたいポイント –
1. そもそも改築ってどんな工事?
冒頭でも紹介したとおり、改築工事がどういった工事なのかについては、建築基準法によってしっかりと定義されています。
そもそも建築基準法とは、建築物を建設する敷地や建物の構造、
住宅内の設備やその建物の用途などについての基準を定めた、建築物に関する法律です。
その建築基準法において改築工事は、
「建物の床面積を大きく変更することなく、建て替えや間取りの変更を行う工事のこと」と定義されています。
実際に改築工事をする場合は、改築工事とは「床面積を大きく変更しない」工事であることを理解しておくようにしましょう。
2. 改築と増築・改修はどう違うの?
建築基準法において改築工事がどのように定義されているのかをご紹介しましたが、
住宅などの建物の工事には、改築工事以外にもさまざまな種類があります。
代表的なのが増築や改修といった工事ですが、一般的にこれらの工事と改築工事は一括りにして捉えられがちです。
ですが、先ほども紹介したとおり、それぞれの工事は異なるものですし、
建築基準法によってその違いが定義されている部分もあります。
- 改築工事…建物の床面積を大きく変えることなく建て替えや間取りの変更をする工事
- 増築工事…同じ敷地内で建物の床面積を増やすことを目的とした工事
- 改修工事…床材や壁紙の張替え、住宅設備(キッチンやバスタブ)のリニューアル工事
つまり、「建物の床面積が変わるかどうか」で、改築工事になるのか増築工事になるのかが決まり、
「建物の構造に手を加えるか加えないか」で、改築工事か改修工事と呼ばれるかが決まるということになります。
このように、増築工事、改修工事、改築工事は、実はそれぞれ異なるタイプの工事です。
正直なところ、これらの工事の違いを知らなかったとしても、業者に相談する上で、問題はありません。
ただ、大まかな違いについては理解しておくとスムーズに話を進めることができるため、できるだけ理解しておくと便利です。
3. 改築・増築工事は申請が必要って本当?
次に、改築工事や増築工事の際に注意しておきたい『確認申請』についてです。
まず、改築工事をする場合、確認申請が必要になるかどうかは建築物の構造によって異なります。
日本の一般的な住宅のほとんどが「木造2階建て」と呼ばれる構造の建築物で、「4号建築物」とも呼ばれます。
<4号建築物とは?>
- 2階建て以下の建物で延床面積が500平方メートル以下、建物の高さが13メートル以下で、軒の高さが9メートル以下の木造建築物
- 延床面積が200平方メートル以下で平屋建ての非木造建築物
のいずれかに該当する建物。
この条件に該当する住宅の改築を行う場合の確認申請は必要ありません。
一方、木造3階建て以上の建物や鉄骨2階建て以上の建物の改築をする場合は、
先ほどあげた条件を満たしていないため、確認申請を行う必要があります。
また、増築工事については、基本的に確認申請が必要となるケースがほとんどです。
準防火・防火地域以外の土地で10平方メートル以下の増築であれば確認申請は不要ですが、
基本的には、「増築=確認申請が必要」と覚えておく方がよいでしょう。
とはいえ、確認申請が必要かどうかは、一般の方による判断は難しいものです。
改築や増築を依頼する業者や地域の自治体に相談しながら進めるようにしてください。
4. 改築工事の種類と費用相場とは?
改築工事とひと口に言ってもその種類はさまざまです。
そこでここからは、改築工事の種類と、それぞれの改築工事にかかる費用の相場について解説していきたいと思います。
希望する改築工事の費用の目安として、確認してみてください。
窓やサッシのリフォーム
窓やサッシ、扉のリフォームも改築工事のひとつです。
窓のリフォームとしては、
- 窓ガラスの交換
- サッシの交換
- 網戸の取り付けや交換
- シャッターや雨戸の取り付け
- 内窓の設置
- 窓の交換
- 窓の大きさや高さの変更
- 窓の増設
などが挙げられます。
それぞれの工事にかかる費用の相場は以下のとおりです。
工事の種類 | 費用相場 |
---|---|
窓ガラスの交換 | 5〜15万円 |
サッシの交換 | 3〜5万円 ※外壁の取り壊しが必要になる場合はプラス20〜50万円 |
網戸の取り付けや交換 | 1〜2万円 |
シャッターや雨戸の取り付け | 10〜15万円 ※足場が必要になる場合はプラス10〜20万円 |
内窓の設置 | 10〜30万円 |
窓の交換 | 10〜50万円 |
窓の大きさや高さの変更 | 20〜50万円 |
窓の増設 | 10〜30万円 ※足場が必要になる場合はプラス50万円以上 |
扉のリフォーム
扉のリフォームは玄関扉と室内の扉のリフォームとに分けられます。
玄関扉には開き戸や引き戸などさまざまな種類がありますが、リフォームの相場は20〜30万程度です。
一方、室内扉のリフォームには、
- 扉のみの交換
- 扉と枠の交換
- 開閉方法の異なる扉への交換
といった3つのリフォーム方法があります。
それぞれの工事にかかる費用の相場は以下のとおりです。
工事の種類 | 費用相場 |
---|---|
扉のみの交換 | 5〜20万円 |
扉と枠の交換 | 10〜30万円 |
開閉方法の異なる扉への交換 | 20〜40万円 |
間取り変更
床面積を大きく変更することのない改築工事で住宅内部の構造を大きく変更する場合、
多くのケースで「間取りの変更」をします。
「間取りの変更」とは、部屋を仕切っていた壁を取り除いて一つの大部屋に変更したり、
逆に、大きな部屋を複数の部屋に分割するようなリフォームのことを指します。
間取り変更リフォームの種類としては、
- 壁の除去
- 間仕切り壁の増設(部屋を分ける)
- 扉の増設
- 収納の増設
- 配置換えを伴う水回りリフォーム
などが挙げられます。
それぞれの工事にかかる費用の相場は以下のとおりです。
工事の種類 | 費用相場 |
---|---|
壁の除去 | 15〜30万円 |
間仕切り壁の増設(部屋を分ける) | 10〜30万円 |
部屋を繋げる際の床の張替え | 30〜100万円 |
扉の増設 | 10〜30万円 |
収納の増設 | 10〜50万円 |
配置換えを伴う水回りリフォーム | 10〜300万円 |
構造体の耐震補強
地震による住宅の破損や倒壊を防ぐために行うのが耐震補強工事です。
耐震補強工事も改築工事の一つで、耐震補強工事は、
- 耐震工事…地震の揺れに住宅が耐えられるよう、柱や梁、壁などを補強する
- 制震工事…ダンパーと呼ばれる特殊な装置を設置し、地震の揺れを吸収することで住宅を守る
- 免震工事…地面と建物の間に免震装置を設置し、地震による揺れを建物に伝わりにくくする
という3つの種類に分けることができます。
なかでも、一般的な住宅に最も多く採用されている耐震補強工事にかかる費用の相場は以下のとおりです。
工事の種類 | 費用相場 |
---|---|
耐震金具の設置工事 | 20〜30万円 |
外壁の補強工事 | 50〜100万円 |
住宅全体の補強工事 | 100〜200万円 |
断熱工事
暮らしやすさに大きく影響する要因の一つに、気候による室内の温度や湿度の変化が挙げられます。
その住みやすさに関係するのが、「断熱性能」です。
断熱性能とは、簡単に言うと、「夏場は冷気を逃がさず」「冬場は暖気を逃がさず」、室内環境を快適に保つ性能のことです。
そのため、断熱工事を行うと夏場の暑さや冬場の寒さをやわらげることができますし、
冷気や暖気を住宅内にとどめておきやすくなるので、省エネ効果も期待できます。
断熱工事の種類はさまざまで、
- 床下の断熱工事
- 天井の断熱工事
- 家の内壁または外壁の断熱工事
- 窓やサッシによる断熱工事
- 外壁塗装による断熱工事
などが主な工事として挙げられます。
それぞれの断熱工事にかかる費用の相場は以下のとおりです。
工事の種類 | 費用相場 |
---|---|
床下の断熱工事 | 20〜100万円 |
天井の断熱工事 | 15〜100万円 |
家の内壁の断熱工事 | 100〜200万円 |
家の外壁の断熱工事 | 100〜300万円 |
窓の断熱工事 | 5〜15万円 |
外壁塗装による断熱工事 | 100〜300万円 |
また、断熱工事は、国や自治体の補助金を利用できる場合があります。
補助金は、工事を開始してから、もしくは、工事完了後に申請しても受理されないことがほとんどです。
断熱工事をする場合は、必ず着工前に交付の基準や申請方法やついてチェックするようにしてください。
フルリフォーム
改築工事には、住宅全体をリフォームするフルリフォーム工事もあります。
フルリフォーム工事はスケルトンリフォーム工事とも呼ばれ、
住宅の基本構造である骨組み以外の箇所をすべてリフォームすることからそういった呼ばれ方をしています。
これまで紹介してきた改築工事の種類の中でもっとも大掛かりな工事といえます。
フルリフォームでは住宅の骨組み以外の部分に手を加えていくため、住宅を一新することができるようになっています。
フルリフォームにかかる費用は、耐震補強や断熱性といった、住宅の機能を含め、
何をどこまでリフォームするかによって異なりますが、
大きく分けると、内装のみのフルリフォームと内装と外装のフルリフォームとに分けることができます。
それぞれの工事にかかる費用の相場は以下のとおりです。
工事の種類 | 費用相場 |
---|---|
内装のみのフルリフォーム | 1,000万円〜 |
内装と外装のフルリフォーム | 1,500万円〜 |
5. 改築したら固定資産税も上がるの?
次に、実際に改築工事をした場合の固定資産税についてご説明します。
固定資産税は、所有している固定資産に対して課税される税金のことで、以下のような計算式で算出されます。
固定資産税の計算式:評価額(建物や土地の時価)×標準税率
評価額は、建物や土地の時価、つまり価値によって決まるため、
「住宅の改築をしたことによって固定資産税も上がるのでは?」と心配になる方が多くいらっしゃいます。
改築工事による評価額の変動については、
改築工事を行うときの確認申請が必要かどうかによって左右される場合がほとんどです。
そのため、確認申請の必要がない改築工事であれば、基本的に固定資産税に影響が出てしまうようなことはありません。
逆に言えば、確認申請が必要な床面積が増やす増築工事などの場合は固定資産税が上がってしまう可能性が高いのです。
また、「耐震」「省エネ」「バリアフリー」を目的とした改築工事をした場合は、減税の対象となることがあります。
適用の条件など、事前に確認されることをおすすめします。
6. 改築に使える補助金を知っておこう!
改築工事をする場合、ぜひ知っておいてほしいのが、「補助金」について。
国や自治体は住宅の改築工事に対してさまざまな補助金制度を設けています。
ただ、補助金を受け取るには申請が必要で、仮に補助金の対象になるような工事を行った場合であっても、
事前に申請していなければ受け取ることができません。
つまり、「申請しないと損をする」ということです。
改築工事を行うことによって受けられる優遇措置は、補助金と減税の2つに分けることができます。
補助金の種類にもよりますが、数万円〜数十万円単位のお金を受け取れる場合もあるので、必ず申請するようにしましょう。
2020年に実施されている主な補助金制度としては、以下のようなものが挙げられます。
名称 | 内容 | 助成額(最大) |
---|---|---|
断熱リノベ | 住宅の断熱工事を行う場合に受け取れる助成金 | 120万円 |
次世代省エネ建材支援事業 | 断熱パネルなど、付加価値のついている建材を使用してリフォームを行う場合に受け取れる助成金 | 200万円 |
次世代リフォーム実証事業 | 住宅の外気に触れる部分に対して断熱工事を行う場合に受け取れる助成金 | 300万円 |
地域型住宅グリーン化事業 | 省エネ性能に優れた住宅に改修する際に受け取れる助成金 | 50〜140万円 |
ZEH支援事業 | 住宅で使用するエネルギーと同じだけのエネルギーをまかなうことができる住宅に改修する場合に受け取れる助成金 | 60万円〜 |
また、改築工事を行ったときに受けられる主な減税措置としては、以下のようなものが挙げられます。
工事の種類 | 費用相場 |
---|---|
耐震リフォームに伴う所得税の減税 | 25万円 |
バリアフリーリフォームに伴う所得税の減税 | 20〜25万円 |
省エネリフォームに伴う所得税の減税 | 25〜35万円 |
耐震リフォームに伴う固定資産税の減税 | 1年間の固定資産税の免除(1/2の免除) |
バリアフリーリフォームに伴う固定資産の減税 | 1年間の固定資産税の免除(1/3の免除) |
省エネリフォームに伴う固定資産税の減税 | 1年間の固定資産税の免除(1/3の免除) |
このほかにも、各自治体で独自の補助金制度を設けていることもあります。事前に確認しておくようにしましょう。
まとめ
住宅の改築工事について詳しくご紹介させていただきました。
住宅の改築工事を行う場合、把握しておくべきことはたくさんあります。
もちろん業者に相談しながら進めることもできますが、特に、補助金や減税制度については、
業者から説明されることはほとんどありません。
そのため、こういった内容を把握した上で相談するのと把握しないままで相談するのとでは、
大きな違いが生じてしまう可能性があります。
親子大工では、どんなささいな心配ごともお客さまが納得されるまでご説明をさせていただきます。
お家のお困りごとやご相談がありましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。